こどもの視力について
私たち人間は、こどもも大人も情報の約80%を視覚から得ていると言われています。
特にお子さまの場合にはきちんと見えることが学習や運動を行う上で重要な役割を果たし、健やかな成長にもつながります。
視力は6歳までに完成
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は物の明暗が分かる程度と言われています。
その後、視力は様々なものを「見る」経験を通して徐々に発達し、およそ5歳~6歳ごろまでに完成されていきます。
視力が発達するためには「ものを見る」ことが最も重要ですが、視力の発達途中でものをクリア(はっきり)に見ることができない状態が続くと、その後ものを見る力が育たず、弱視の状態になってしまうこともあります。
弱視について
弱視とは視力が弱いことをいいます。
どんなに眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力が出ないものです。
弱視には二種類あります。
- 重い目の病気があり医学的治療をしても視力の向上する見込みのない場合
- 視力が悪く病気が特にないのも関わらず視力が弱いもので視力の発育不足から起こる視力低下の場合
こどもは心身ともに未熟で視力も未熟です。
この視力発育の大切な時期に上記で述べたように6歳くらいで目の発育を損なうものがあると発育不足となって眼鏡で矯正しても視力が弱く、医学的に弱視になります。
3歳児検診で見つけることができれば眼鏡による発育促進をすることができます。
6歳以上となると健康な視力を取り戻すには大変な努力が必要とされています。
こどもの目の発達を妨げる屈折異常
目の発達を妨げる屈折異常は大きく3つに分かれます。
遠視
弱い遠視度数の場合、遠くも近くも見えます。「目がいい」と思われがちですが、遠視が強くなると、遠くも近くもピントが合いません。弱視の原因の多くが遠視によるものです。
近視
遠くのものを見たときはピントが合わないのでぼんやりして見えますが、近くにあるものに対してはピントを合わせてみることができます。強度近視でない限り、弱視になることはほとんどありません。
乱視
縦と横方向で屈折率が異なるため、網膜にピントが1点に集まらない状態です。光の焦点が定まらないため歪んだ像が写ります。強度の乱視になると、弱視になる可能性もあります。屈折異常の大部分が目の大きさの問題です。背が高い人もいれば低い人もいるのと同じように、目の大きさも個人差があります。屈折異常の許容範囲を超えると、網膜にピントを合わせることができずにピンボケでものを見ている状態になり、弱視のリスクが高まります。
斜視
ふつうものを見るときには、右目も左目も両方の目が見ようとするものの方向に向いています。ところが片方の目が見ようとするものを見ているにも関わらずもう片方の目が目標と違う方向を向く場合があります。
斜視や弱視を見つけるチェックポイント
上記に当てはまることなど心配される症状がありましたらまずはお近くの眼科医へ一度相談を。
幼少期の弱視は早期発見でかなり回復します。
2006年4月より9歳未満の子供用メガネの一部に福祉保険が適用されるようになりました。
眼科さんから弱視、斜視と診断を受けましたら、是非一度ご相談ください。
0歳から3歳の乳児
3歳児検診が重要
3歳児検診も目の成長を確認する大切な機会です。個人差はありますが、3歳頃から輪の切れ目の検査表“C”を使用して視力検査ができるようになり、視力検査を行うことで日常生活では気づかない目の発達を妨げる要因に気づくことができます。
特にこどもは視力が下がっていて、ものが見えにくくても、他の人と見え方を比べることはできないため、見えていないことに気がついていないことが多く、それをうまく伝えることもできません。日頃から、お子さまのものを見る様子や表情、姿勢に気を配り、「あれっ?」と感じることがあれば3歳児検診を待たずに専門家での視力測定や診断を行いましょう。
0歳からのこどもめがね
専門家での視力検査や診断後にメガネが必要と判断された場合には、視力の発達を助けるためにも早めに適切なメガネを着用しましょう。
乳幼児のお子さまにメガネを掛けさせることに抵抗があるのも事実ですが、6歳までに視力が完成されることを考えると、「こどもだから」「まだ小さいから」といってメガネを使用しないことで悪影響を与えかねません。
また、メガネの作成をご希望の際には、処方箋をご持参いただくと目の調節力を考慮した、最も適切な度数でメガネを作成することができます。
4歳から8歳までの幼児・小学校低学年
「視力が少し悪いだけだから」と放っておくと、子どもの視力に悪影響なことはもちろん、目の病気を見逃してしまう可能性もあります。
また、子どもは目の調節力が優れていて、視力が悪くても調節力でカバーできてしまう場合があります。
実際に検査しなければ分からないことが沢山あるため、定期的な検査で子どもの目を守りましょう。地域や区、行政や学校関係の検診は必ず受診しましょう。
目の成長を測るタイミングとして押さえておきたい時期はふたつ。最初のタイミングは言葉での意思疎通がスムーズになり、大人と同じように視力が測れるようになってくる3〜4歳、そしてもう一つは視力と脳の関係が完結する6歳の就学前です。この時期に目がしっかり育っているのか確認することをおすすめします。
また、既にメガネをかけている場合も、定期的に度数が合っているかどうか確認することが大切です。半年から1年を目安に、眼科などで視力チェックを行い、学校や家庭での生活が支障なく行える度数のメガネを使うようにします。
目を育てることは、脳を育てること。
子どもの目を気にかけてあげることは、好奇心や興味の幅を広げることにもつながります。
日頃のコミュニケーションと定期的な検査を通じて、子どもの目の健康と成長を守っていきたいですね。
9歳以上の学生
最近、お子様は目を細める・長時間集中して作業ができない・テレビを近くで見たがるなどの仕草をしていませんか?
これらの仕草には視力が関係している可能性があり「見えない」ことが勉強や日々のコミュニケーションに影響する場合もあります。
成長に伴い近視度数が早急に進むことがあります。これは、身長が伸びると共に頭や眼球も大きくなりピント(焦点)が合いづらくなるためとも言われています。興味や行動の範囲が広がる成長期に十分な視力がないと、黒板や教科書の文字が読みにくく勉強に集中できないだけでなく、体育・スポーツでの危険や日常生活のコミュニケーションでの不便が生じる可能性もあります。
「メガネをかけると更に目が悪くなる」と心配される方もいますが、適切に着用すれば「メガネが原因」で度が進むことはありませんので、安心してメガネを使用しましょう。
疲れにくいフレーム
成長過程にある9歳~15歳頃までは活発に活動されることが多い上、顔は骨格が均一ではありません。顔に合わないメガネを使い続けると肩こりや頭痛が発生するなどし、身体に影響する場合があります。
メガネ選びのポイントは、安全性、機能性、かけ心地、デザインが網羅されており視力矯正の効果が十分に発揮できることが重要です。 特に、メガネがすぐにずれ落ちたり、鼻や耳の裏が痛くなることが無いよう、調整(フィッティング)が可能で顔や目の幅(PD/瞳孔間距離)にあったフレームを選びましょう。
生活環境に合ったレンズ
「ずっと遠くを見ているわけではなくゲーム機やタブレットなどを使用することも多いし、レンズの度数は弱めにした方がいい?」とご質問頂くことがあります。メガネが目の状態にあっていないと、疲れや視力低下の原因になる可能性も考えられます。
しかし近年、大人でさえ10年前より物を見る距離が10cmは近くなったと言われており、特に9歳~15歳頃であれば、日常生活の中で“遠く(黒板)”と“近く(ノート)”の視線移動が頻繁に行われています。この時、必要なのはメガネの度数を弱めることではなく、メガネレンズそのものお子さまの生活環境に合わせることです。「調節力サポートレンズ」と言った進化したメガネレンズなどを活用し、適切な度数のメガネを使用していきましょう。